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『史料が語る向井水軍(将監)とその周辺』新潮社

『史料が語る向井水軍とその周辺』新潮社刊は、向井水軍を中心に、その出自から向井将監の称が消滅するまでの周辺の動向を、新出史料や未考証史料の紹介を兼ね、研究書としての体裁を保ちつつ一般向けに著述したものである。徳川水軍向井氏の本拠地・三浦半島に居を構える筆者にとって、向井水軍を纏めることは積年の課題であり、ご子孫の向井辰郎氏より『清和源氏向系図』および若干の古文書を託されたときから、きちんと史料を整理し世に発表する責務があると考えていた。しかし、手持ち史料だけでは情報不足で新たな史料を発掘せねばならず、着手してから刊行するまで四年の歳月を費やしてしまった。

本文に原本や漢文を挿入したので少々読みにくいが、新事実の情報を伝えるには、どうしても根本史料となる原本や漢文の掲載は不可欠であり、ついつい煩雑になってしまった。漢文は崩すと価値を失うので、そのまま掲載し、読み下しを付し解説し、読み易い内容に心掛けたつもりである。 

本書の執筆中、向井氏関係史料は、名古屋大学・早稲田大学・東大史料編纂所などに未考証の「角屋文書」があり、多数存在したことに気付かされた。向井氏研究の遅れた要因は、けっして史料が極少であることに由来するのではなく、研究の目が向けられなかったからだと、改めて覚える結果となり、筆者自身も多くの新知見を得ることができた。筆者の浅学と調査不足は多々あるが、ともあれ刊行することにより、ご批判を頂く機会を得ることができ、ひとまず責任を果たすことができたと思う。

 筆者は、これまで誰も書かない未研究の部分、いわゆる処女史に焦点をあて、新たな一頁を日本全体史に加えることを目的とし、これまで『相模三浦一族とその周辺史―その発祥から江戸期まで』『史料が語る坂本龍馬の妻お龍』『徳川家康のスペイン外交―向井将監と三浦按針』などを上梓してきた。筆者のような在野の者が未開拓の分野に挑戦し、ゼロからスタートすることは厳しいものがあったというのが、実は本音である。処女史を手がけるのは本書を最後とし、今後は、読み易い歴史書を柔らかいタッチで執筆していきたいと思う。

本書の執筆中、国史学会・日本海事史学会・戦国史研究会・洋学史学会の例会発表の時機を頂き、諸先輩方のご教示を仰ぐ機会を頂戴し、本書に反映できたことは幸運でした。また柴辻俊六氏や宮城睦氏よりご教示を頂き、とりわけ小川雄氏には多大なご尽力・ご教示を頂いたことに感謝を申し上げます。 

筆者の力不足により、史料を十分に生かせなかったことが多々あり、反省もあるが、向井水軍の研究は、ひとまず擱筆することとする。末筆ながら、上梓にあたり新潮社の柳山 努氏をはじめ、関係者の方々のご尽力に感謝を申し上げます。

なお本書の初校中、黒田日出男氏より、向井将監に関する書籍を角川選書より九月に刊行される旨をお聞きし、同時に向井将監のことを執筆していたという偶然さに、お互いにびっくりしてしまいました。広い分野からの向井氏研究がなされていくことに大変嬉しく思いました(著者「あとがき」より)。

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