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日本城郭史学会 「城郭だより」87号

日本城郭史学会  「城郭だより」 87号   

最近の注目されるー城郭関係図書から

     鈴木かほる著<史料が語る>『向井水軍とその周辺』

 この度、戦国期から徳期にかけた活躍した向井水軍に関する本格的調査研究を、平易にまとめあげた本書が出版された。
 昭和45年秋「『江戸図屏風』「(現国立歴史民俗博物館蔵)が見つかり、翌年春にその全容が明らかになり、多くの関連研究者は大きな驚きをもってこの絵画史料に見入った。江戸城家光造營の天守や諸建築、大名屋敷街の様子など実に細やかに如実に描かれる。その光景の中で目が引かれたのは日本橋のすぐ東側、日本橋川と楓川の分岐点に占拠する「向井将監邸」であった。
 なんと多門長屋が川に面して囲み、日本橋川に二基の二重櫓が上がり、中間に船着き場がある。邸宅内の庭園には望楼まで描かれている。この屋敷の主である向井将監とは、徳川幕府船手頭の向井忠勝で、徳川水軍の海賊衆筆頭である。 向井氏は伊勢国の水軍であったが、武田水軍の駿河侵出からは武田水軍を率い、武田氏滅亡後は徳川水軍の海賊衆を束ねた。 伊勢水軍が駿河へ、さらに東国を代表する海賊衆に成長するのは、伊勢神宮領の御厨が全国に広がり、伊勢湾の対岸の常滑焼大窯需要が中世日本全体に及んでいたことに関連する。九鬼水軍も同様である。
 本書ではまず戦国期の今川・武田・徳川の麾下での向井氏が果たした役割を述べ、後北条水軍の梶原景宗との関係、小田原合戦など興味尽きない点を詳しく触れる。徳川家康の江戸入国にあたり、三崎海賊衆を掌握。長谷川長綱との関係、文禄慶長の朝鮮への船手衆について述べる。徳川政権樹立直後では三浦按針との出会い、間宮造酒丞、千賀氏との関係、木更津と神奈川湊について述べる。さらに安宅船と向井水軍の関わり、向井忠勝と江戸城普請の役割などを述べる。またあまり知られていない「スペイン貿易と浦賀湊」の関係にも触れる。
 鎖国体制期の向井水軍では、鎖国による水軍の変質、大坂湊と向井氏などを述べ、豪商角屋七郎次郎と向井政綱についても述べる。是非とも、多くの歴史ファンに一読をお奨めする好著である。(新潮社図書編集室刊、価2900円 税別・送料別)

 
 

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